ロールモデル
人生は思ったよりも長いですよ。頑張りすぎずに、でもあきらめずに。
高知大学 理学部 理学科 物理科学コース 物性化学研究グループ 准教授(執筆当時)
島内 理恵
SHIMANOUCHI Rie
略歴
大阪大学理学部化学科卒業。大阪大学大学院理学研究科博士前期課程修了後、高知大学理学部化学科へ助手として着任。博士号(理学)を取得後、常勤講師を経て、現在は物理科学コースの准教授。
なぜ研究者の道を選びましたか?
それが、よくわからないのです。受験の時とか、研究室選びとか、進学か就職かとか、人生の岐路に立つたびに自分なりに一生懸命考えて、「これだ!」と思う方向へ進んできたら、いつのまにかここにいた・・・という感じです。
研究の魅力は何ですか?
なんと言っても、自分の手で真実に触れることができる喜びです。いろいろ調べて自分にできる計画を考えるのも好きですし、実際に実験して結果をまとめて、そこから新しい事実が読みとれた時には、本当に楽しいし、心から感激します!私は、私の研究テーマ「セラミックス」が世界で一番素晴らしいと思っていますし、本当に大好きです。
現在の研究および生活
現在の研究対象は電力用電池への応用を目指したイオン伝導性セラミックス(固体電解質)です。無機化学的合成・電気物性の測定・結晶構造解析・イオン伝導シミュレーションを中心に研究をおこなっています。「セラミックスは地球を救う」を合い言葉(!)に、学生さん達と一緒に日夜研究に励んでいます。
生活としては、朝から晩まで、「忙しい」の一言です。次々現れる、実験や研究や授業や会議やレポートや原稿や夕飯や洗濯や子ども(と夫)の世話を、エイヤーっと、「やっつける」毎日です。この原稿が終わったら今月の締め切り原稿は最後なので、とりあえず週末はゆっくり寝たいな・・・。
今後研究者を目指す若い方へのメッセージをお願いします
なによりお伝えしたいのは、「がんばりすぎるな!無理するな!身体を大切に!」ということです。女性研究者って自分の力で結果を出すことが好きだから(それこそが研究ですよね)、知らず知らずのうちに無理をしてしまいます。
私が高知大学に助手として着任することが決まった時、阪大理学部の女性スタッフが何人かでお祝い会を開いてくれました。その時、全員から口々に言われたのが「無理をしないように」とのこと。私は内心ムッとしました。若輩ながらも、自分としては、化学の研究のために命をも投げ出す覚悟だったのです
あれから20年以上経ちましたが、先輩方がおっしゃっていたことが本当に良くわかりました。書くのもつらいのですが、複数の友人が次々に体調を崩しました。現在も苦しんでいる人、研究をあきらめた人、若くして亡くなった知人もいます。体力は有限です。人生には調子が悪い時もあります。がんばりすぎないで、見栄を張らないで、しんどい時はそう言って下さい。そのためにもまわりの人とは良い関係を作ってください。余計な仕事はうまく逃げて下さい。少しくらい足踏みをする時期があっても大丈夫です。あせらないで我慢して、チャンスを待ってください。
あなたが研究をあきらめなければ、研究はあなたを見捨てない。絶対に!
人生80年として、数年のペースダウンなんて測定誤差のうちですよ!