大学紹介

2014年を迎えて

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
 今日の話はあまり楽しい話ばかりではございませんけれども、まず始めに、今朝『文教ニュース』を開きましたところ、中小企業との連携、共同研究で資金を受け入れている国立大学TOP30が載っておりました。高知大学は30位でありましたけれども、中四国では、鳥取大学と山口大学に次いで3位で、大変嬉しいお話がございました。ぜひともこれからも地域との連携を進めて、大学の運営をより豊かなものにしていくようにお願いしたいと思います。
 さて、平成26年は、高知大学にとって本当の意味での「大学改革元年」であると考えております。やっと、と言うべきか、とうとうここまで来た、と言うべきか、それは皆さんの心の中でそれぞれ違うことでございましょうけれども、私の持っているイメージとしましては、「やっと5、6合目に来た」というところであり、「頂上はまだ遠いけれども、もう引き返せない」、「ここからは登っていくしかない」ところまで来た。そして、ここまで担当理事をはじめ多くの皆さんの努力で積み上げてきた、と思っております。5、6合目という意味は、既に一部始まっておりますけれども、教育の内容の改革を早く進めなければなりませんし、教職員の意識改革も、もっともっとレベルアップしていかなければならない、という意味も含めてのものであります。これからが、ワーキンググループの皆さんや、各部局の皆さんの知恵と腕の見せどころであると考えております。仮称でありますけれども、新学部である地域協働学部、あるいは新学科の内容と質をどのようにしていくか、というところが改革の内容の目玉でありますし、また、それによって再編される新生の学部がどのように変わるのか、ということも文科省は非常に注目しているだろうと考えております。

 これらの部局、組織の質を上げるためには、この改革の中で進めております学長預かり20%が、どのようにして再配分されるか、ということが重要なポイントであると思っております。その為には、各部局からの改革案、あるいは将来的展望というものを出していただかなければなりませんし、センターを中心に、少なくとも10名以上の教員の配置というものも予定されつつあるようです。どの部局がどのように改革を考えていくか、ということが大変重要であると考えております。また、学長の戦略的な人員が、現在すべて使い切られておりますけれども、これが定期的に一定の数使用できるようにならなければ、フットワークのいい大学改革というものはできないだろうと考えております。これは、例えばの話でありますが、いくつかの大学は毎年1%の教員枠を学長預かりとして、学長の戦略的な改革に使っており、そして、そういう戦略的な計画がない年は、そのまま元の部局にお返しする、というようなことをして、毎年毎年新たな改革をし、そのことによって新しい、先進的あるいは極めて前向きな計画を出した部局は、教員の数が増えていくので、各部局から新しいアイデアがどんどん出てきて困る程であり、来年からは2%に上げなければならないかもしれない、ということを言っているようです。ぜひとも高知大学も、各部局が今以上に良くなるためにはどのようなことを考え、どのような教育、研究をし、どのような社会貢献をするか、ということを考えて、どんどん執行部に提案をしてくださるようになって欲しいと願うものであります。
新組織がそう遠くないうちに完成し、文科省に認めてもらうことになりますけれども、ある大学の学長さんとお話していた時に、「新組織や新体制が本物になっていくのに20年はかかりますよね」と言うと、彼も「その通りだ、とても5年や10年では本物にならない」という話でありました。黒潮圏総合科学専攻、海洋コア総合研究センター、JAMSTECとの連携、さらには高知医科大学と高知大学との合併、これらがだいたい10年たったところであります。その目で見ますと、まだまだ混乱、あるいは中だるみのピークを過ぎたあたりで、これから出口に向かって進んでいくところかという印象を持たざるを得ません。ただ、これからどんどん前向きに発展していき、これまで進めてこられた10年前の改革が新たな高知大学の目玉として、大きく花開く日がそう遠くないことを期待するものであります。
 学系部門制度、教員評価と人事考課、土佐さきがけプログラムなどは、まだ始まったばかりであります。中だるみや混乱の時期を迎えないで、できるだけ早く、発展的に質の高いものにするよう、全教職員の知恵を出していただいて、進めていただきたいと考えております。
 ある学部の学生さんによれば、「学科の間は非常に垣根が高く、同じ学部なのに教育の行き来ができない」ようです。現在、既に教員及び職員のマンパワーはずいぶん削減されておりますが、これからも削減されるというのが一般的な考えかと思います。そうしますと、この部局間の垣根を取っ払って、現在思うように動いていない学系部門制度をもっと有効に使い、お互いが支援しあってよりよい教育・研究をしない限りは、このマンパワーの不足を解決することはできないだろうと思います。言ってみれば「相互扶助」、お互いが相手のことを知り、理解し合うことで支えあっている。こういう教育・研究、大学運営というものが進まない限り、高知大学の未来はそう明るいものではないと考える次第であります。
さて、大学の使命は、教育、研究、社会貢献であることは皆さんご存じのとおりであります。まず、地域を含めた社会貢献につきましては、COC事業、我々はKICS(キックス)と呼んでおりますが、今日、サテライトで働いていただく教員の第一号である赤池さんが挨拶に来られました。この事業は、高知大学の命運を握ると言ってもいいくらい重要なものであると認識しております。文科省の中でも非常にいいアイデアだと言われており、高知大学のこの事業がうまくいかなければ、他がうまくいかなくても不思議ではない、というくらい、私はこの事業に期待しておりますし、そうしていかなければ、地域にある高知大学としての発展はないと考えております。新学部がKICS事業の教育の中核として位置づけられておりますけれども、全学部が地域協働的な教育をする、そういう教育の改革をするんだという約束のもとに、COC事業を採択してもらったわけでありますから、ぜひとも全学部の問題として全学の教育をお願いしたいと思っております。
次に、研究につきましては、まだまだ十分ではないとお考えの方も多いと思いますし、私もそう思います。少なくとも科研費の申請は、100%を目指す大学であって欲しいと思っております。この秋の申請率は、専任教員だけのもので76%に過ぎません。つまり専任教員の4人に1人が科研費を申請していない、ということであります。研究も、外部資金をとらなければ推進できない時代になっていることは、皆さんもご存じの通りであります。この科研費の申請は、全ての研究者に平等な権利と、義務も含めて与えられているものだと考えております。この誰もが申請可能なものに申請しないということは、大変残念なことであります。「優れた教育は、優れた研究からうまれる」と信じております。また、研究に対する意思表示という意味合いもあると認識しております。科研費を申請しない先生方は、研究する意思を持っていないということを、学長になってから会議で複数回申し上げてきましたが、これは今も同じであります。さらに、そういう研究の意思表示を示さない先生方が、卒業研究あるいは学位論文の指導をしているということは、その学生さんたちがそのことを知った時にどのように感じるだろうか、と思います。ぜひとも全教員が来年度には科研費の申請を出していただけるようにお願いしたいと思います。決定したわけではありませんが、基盤的な研究費、学長裁量経費の審査の場合には、科研の申請というものを参考にさせていただくつもりであります。

 教育改革につきましては、本学の学部長さん、教務委員長さんと、直接議論させていただいておりますので、ご理解いただいていると思いますが、昨年度4年生の留年率は約30%、つまり高知大学4年次生の約300人が卒業できないでいるという多さであります。また高知大学の就職率、これは文科省が公表しているものでは、平均より少し上となっていますが、先般の『週刊ダイヤモンド』によりますと、正規職員就職率は高知大学は大変低いです。中四国の私立も含む54大学中43位であります。国立大学としては、中四国で最下位でありますし、高知大学の次に悪い島根大学は約73%、高知大学は約69%、それ以外の大学は全て80%以上の正規職員就職率を達成しているという結果でした。これは、いかに高知大学の正規職員就職率が低いかということが分かると思います。言葉を変えると、我々がやっている教育、人材育成が、社会の求めるレベルに達していないということではないでしょうか。ぜひとも現在進めている教育改革を、迅速に、よりよいものにしていただけるようお願いします。

 さらに、昨年学生さんの自殺が非常に多く見られました。過去何年かはなかったと認識しておりますが、平成25年だけで5名の学生さんが自死されました。この中には理由のわからない方もいらっしゃいます。理由が判明していて、それが大学サイドになんらかの問題があるという場合には、大いに反省しなければならないのは当然のことですが、その理由がわからないということ自体が、我々教育サイドにとって大変な問題であると考えております。いかに教職員と学生さんとの距離が遠いか、あるいは学生さん同士の距離が遠く、本音で話し合える相手がいかに少ないか、ということであり、大学側がいくら対応策を立てても、相談に来てもらえなければ、我々は対応のしようがございません。病院に患者さんが来てくれなければ、私どもがいくら名医をそろえても意味のないことと同じことであります。つまり、我々はこれから学生さんとの距離をいかに縮めてゆくかということを真剣に考える、ということも含めた教育改革でなければならないと言いたいのであります。また、退学者が年間約50人おりますが、これも見方を変えますと、我々の教育が足りないために学力不足で退学する者、我々の教育に魅力がないために他の大学へ替わっていく者、大学で学ぶよりもっと意義のある未来を見つけて転身する者、といろいろあるでしょうが、高知大学で学ぶよりは他にいいことが見つかったということでは、教育サイドの大変な力不足だと言わざるを得ない気がします。なぜかと言いますと、入学試験で合格させたということは、彼らが大学生活をまっとうできるという評価をしたからにほかなりません。そう評価したからには、我々は彼らに大学生活をまっとうさせるだけの努力をしなければならない。それが受け入れた者の責任であると考えるからであります。ぜひとも気楽に相談できる教職員であり、ホームカミングデーには、先輩・後輩が帰ってきたいと思い、会場に入りきらなくなるというような、現役の教員、学生、卒業生の関係ができるような教育がこれからなければなりません。

 教育の成果というものは、何をやったかではなくて、学生さんがどう変わったか、つまり卒業生がどう変わっていったか、ということで評価されるものであり、それを分析することが可能な体制を検討していかなければならないと考えている次第であります。
 全教職員にお願いしたいのは、「本当にこれでいいんだろうか」ということを常に考えていただきたいということです。私は、留年率や就職率だけを考えてみても、決して現状でいいとは考えておりません。それはここにいる皆さんも同じ考えだと信じております。
 最後に、高知大学は現在進行中の組織改革及び教育改革によって、「変われない高知大学」から、「見事に変身する高知大学」へと進化していくと宣言できる年にしたいと思いますし、また、「人材育成の先進的な国立大学である」という宣言ができるような改革を進めていきたいと考えておりますので、ぜひとも全教職員の力で実現するようお願いする次第であります。
 皆さん、学生さんから夢をもらいましょう。そして共に進みましょう。よろしくお願いします。

 

2014年1月吉日

 

高知大学 学長 脇口 宏

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