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2023.10.21-22希望創発研究会(10月例会・対面)を実施

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2023.10.21-22希望創発研究会(10月例会・対面)を実施

2023年10月31日

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 10月21日(土)-22(日)、希望創発研究会(10月例会・対面)を実施し、県外企業人、高知県内企業人合せて11名、学生10名、その他関係者12名の計33名が参加しました。
 今回は、各チームの研究テーマに向けた調査のために、高知県内各所、東は奈半利町から西は宿毛市に赴きました。各チームの訪問レポートをご覧ください。

【チーム1】

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 チーム1は「住みやすさ」をキーワードに、街づくりに関わっている人や実際に住んでいる人にインタビューすることを目的に、佐川町・梼原町(1日目)、大月町・四万十市(2日目)を訪問しました。

 佐川町では道の駅佐川と佐川おもちゃ美術館を訪問し、二手に分かれてインタビューしました。道の駅佐川では駅長の宮中様にご対応いただき、道の駅を佐川町に作った意義や売り上げ、これからの目標などについて話を伺いました。おもちゃ美術館では館長の岡﨑様にご対応いただき、佐川町で行っているウッドスタートをはじめとする木育に関する取組や、木のおもちゃの価値、美術館に来る人たちへの館長の想いなどについて話を伺うことができました。

 梼原町では梼原町役場まちづくり推進課移住定住コーディネーターの片岡様に2名の移住者(長田様、たしろ様)を紹介していただきました。片岡様からは移住者への支援や、移住者にとって重要な「環境」を意識した空き家の整備や事前マッチングといった取組みについて話を伺いました。長田様、たしろ様からは移住を決めたきっかけや、今の生活環境など実体験を伺いました。移住するまでの背景は全く違うお二人でしたが、「育てる環境」「人とのつながり」といった言葉が共通して出ていたのが印象的でした。

 大月町では柏島に行き、地元に住んでいる方にインタビューし、買い物など移動の大変さについて話を伺いました。大月町や梼原町は交通の便が悪いと思っていましたが、住んでいる人にとってはあまり大きな問題と捉えていないようでした。

 四万十市では中村駅の土佐くろしお鉄道株式会社を訪問しました。総務部の刈谷副部長に対応していただき、地域インフラとしての重要性や、問題点・対策、イベント・サービス・情報発信などの企画、将来的にどうあって欲しいかなどの話を伺うことができました。

 

【チーム2】

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 チーム2は、中芸地域を訪問しました。現地の方々に「地元のいいところ」「わるいところ」などについてインタビューすることを通じて、「現地の方のリアルな意見を取り入れた地域課題解決策を見出す」ことを目指し、活動しました。

 最初に訪問したのは、安田町。地元の食料品店「輝るぽーと」の代表の方や、「安田まちなみ交流館」の受付の方などにお話を聞きました。安田は自然の豊かさがある反面、店が少なく不便であるといいます。また、「若者が来てくれることが嬉しい」という意見が印象的でした。

 次に訪問したのは、北川村と奈半利町。「ダチョウの楽園」「北川温泉 ゆずの宿」「岡島精米所」「田中勘介商店」などを伺い、地元で精力的に活動する方々のパワーをいただいてきました。岡島精米所の岡島さんは、北川村の名産品「かんばもち」製造の本家として、周りの人に元気づけられ、ご高齢ながら現役で働いていらっしゃるとのことでした。田中勘介商店の女将さんは、村民の方とラフなコミュニケーションをとり、周りの方に助けてもらいながら暮らしているとのことでした。

 今回インタビューさせていただいたどの方も気さくに丁寧にお話しをしてくださったのが印象的でした。また、人の温かさや自然の豊かさを地元の良さとしてとらえていました。
 これらのお話をふまえ、地域の課題を解決できるような、イベントやビジネスモデル、政策などを考えていきたいと思います。

 

【チーム3】

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 チーム3は2日間に分けて高知県梼原町を訪問しました。県下の多くの市町村が過疎化が進む中、集落の活性化に精力的に取り組む人々の思いと施策に触れることで、普遍性のある希望創発の切り口を見出せないかと考えております。

 一日目、私たちはまず梼原町立歴史民俗資料館を訪問し、その歩みを確認しました。
梼原町は平安時代(913年)、藤原氏の後裔である藤原経高(後に津野経高に改名)が開拓したことに端を発します。律令制における上国である伊予国との近さも手伝って人や文化が集まり、津野山神楽に代表される津野山文化が形成されました。幕末には坂本龍馬脱藩の手助けとなり、豊かな自然の中に現代日本に通じる歴史の跡が刻まれています。さらに昭和38年の2か月に及ぶ記録的大雪を乗り越え、風力発電や木質バイオマスの循環利用(ゆすはらペレット)の活用のような持続可能社会に積極的に取り組む町政といった、逞しくかつ先進的な姿勢が窺われました。

 次に「集落活動センターゆすはら東」を訪問し、事務局の尾崎さんにお話を伺いました。梼原町では近年、フランス、スペイン、中国、台湾など海外からの観光客が増加しており、主な目的は建築物だそうです。梼原町には著名な建築家である隈研吾氏が手掛けた施設があり、また、高いポリフェノール含有量を有するイタドリ茶などもお土産として人気があります。賑わいを見せる一方で課題となっているのは、英語ができる人が少なく受け入れ態勢が整っていないことだそうです。
ここで昼食をいただきましたが、丸々とした鮎の唐揚げとイタドリの葉を練り込んだうどんは、実にリピートしたいおいしさでした。

 付近を散策しつつ梼原町生涯学習交流センター(「ゆすゆす」寮)を訪問しました。
県立梼原高等学校の寮で、毎年50人前後が共同生活をしているそうです。清潔かつ食事付きで4万円/月と非常にリーズナブルなところもあり、こうした環境で子供に育ってほしいと考える人も多いのではないかと考えました。なお、ここにくる途中神幸橋に寄りましたが、その下にある梼原川には大きな鮎が水底の岩と見間違えるほどの数で群れていました。この後訪問した四国カルストも合わせ、この地域の自然の豊かさ、雄大さを全身で感じることができました。

 2日目は雉の生産を行っている株式会社四万川を訪問し、代表取締役の空岡さんにお話を伺いました。平成2年の終わりごろ、偶然雉の繁殖に成功したことをきっかけに生産組合が発足し、生産方法が確立されてきました。地道な営業努力が実を結び、料亭やふるさと納税などで需要が伸びており、現在1700羽から5000羽に増やす準備を進めているそうです。一方、雉は鶏に比べて生産効率が低く、生産者の確保が難しく、また養雉場の立地もインフラや近隣住民の理解などで制限があるなどの課題があるとのことでした。

 その後、集落活動センターおちめんを訪問し、廃校になった小学校を改装した宿泊施設を見学させていただきました。驚いたのは体育館で、廃校になった後に有効活用することを想定していたかのような、見応えのあるデザインでした。

 今回の訪問させていただいた梼原町は、伊予方面の都市部への交通の便に加えて、特徴的な建築物や、よく知られる歴史との関連などの観光資源があり、住み続けたい、移住したいという人が多いことに納得しました。一方で、県内の交通面で類似した立地の町ではどうなのだろうか、という疑問が出てきました。このあたりを踏まえ、次月例会の取り組みを考えていく予定です。

 

【チーム4】

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 チーム4が高知県横畠地区を訪問しました。

 チーム4ではありたい姿として「他者を笑顔にできている自分と社会」「自分の好きが見つかるコミュニティ」「誰かの不安に寄り添い支え合っている社会」などのキーワードが議論の中であがりました。それに対して現状を話し合った結果「他者との関わり・コミュニケーション」がキーワードになっていることに気づき、自分以外の人との関わり方に何か課題があるのではないかと考えました。これらのキーワードや個々の課題を深めるために調査を行いました。

 1日目は高知市内、佐川町、越知町の3班に分かれてヒアリングを行いました。移住者、Uターンで戻ってきた方、地元のお店の方、親子やお年寄りなど様々な背景と年代の方にインタビューしました。人が優しい、自然豊かで食事がおいしいなど高知県の魅力を再確認するとともに、災害対策や少子高齢化の不安を聞くことができました。一方で自分自身や自身の周囲については不安を感じていることは特になく、今の場所もこのまま変わらないでほしいという声も聞くことができました。目標をもって活動している方と自身の現状に満足している方は不安や不満がないと感じました。また、商工会で会う人々の交流が、仕事には直接関係ないが日々の活力になっているというお話も聞けました。不安や他者との関わりについて考えるときにコミュニティの大きさを考慮するのは大事だと思いましたし、高知県の人が優しいという魅力と他者との関わりが活力になるという話から、どのようなアプローチができるのか考えるヒントが得られました。

 2日目は横畠地区の集落活動センターを訪問し、元地域おこし協力隊の大原梓さん、IT系の前職から移住して一から農業を始めた清田健次朗さん、Uターンで帰郷し70歳で町会議員になった小田壮一さんにお話しを伺いました。チーム内の議論やネットの調査だけではわからない集落の実情やそこに関わっている人たちの思いなど大変貴重なお話を聞くことができました。今行政が担っていることは、昔は地域の人たちで協力してやってきたこと、人が減ってきている中で60,70代はまだまだ若手、月収だけで生活できる仕事がなく色々な仕事を組み合わせて生活している、大きい店が入ってきたら便利だが昔からあるお店は大変など、地域の人々の関わりの変化やこの先の集落の未来について深く考えさせられました。また、50年ぶりに地元に戻ってきたら人口は半減し昔の活力が失われていた地元を盛り上げるために、「関係人口」をいかに増やしていくか、外では当たり前のことができていない現状、集落での子育て世帯の悩みなどリアルなお話も聞くことができ、中にいるだけではわからない、外からの視点の大事さに気づけました。こういった課題感だけではなく、やりたいことをやっている人は幸せだという話や、やりたいことは特になかったけど、周囲との関わりの中で触発されたなど、大変なこともあるけど好きなことをやっている人は生き生きしていると感じました。お話を聞きながら地域の案内もしていただき、横畠の生姜や山椒の畑や黒森山からの流水、緑豊かな自然の風景を見ると、この風景を残していきたいという思いが自然と湧き上がってきました。

 この2日間のフィールドワークで色々な人と接することで、チーム活動だけでなく、個々人の今後の生き方についてもとても刺激になる有意義なお話を聞くことができました。メンバー個々が感じたこと、思いを共有し、今後のチーム活動を具体化していきたいと思います。

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