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2022.10.8-9希望創発研究会(10月例会・対面)を実施

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2022.10.8-9希望創発研究会(10月例会・対面)を実施

2022年10月20日

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 10月8日(土)-9(日)、高知大学希望創発研究会(10月例会・対面)を実施し、県外企業人、高知県内企業人合わせて8名、学生13名、その他関係者12名の計 33名が参加しました。
 今回は、各チームが想定しているテーマに沿って、高知県内各所へ調査に赴きました。各チームの訪問レポートをご覧ください。

 

【チーム1】

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■訪問の背景
 チーム1では、これまでの話し合いの中で、「農業」「移住」「子育て」「コミュニティ」「空き家」「継承」「マッチング」等のキーワードが浮上しました。そのため10月例会時には人と人、人とモノのマッチングに携わる方々を訪問しお話を伺いました。

■はぐあす 藤原恵さん
 産前産後のお母さんをサポートする施設はぐあすでは、主眼の産後ケア拠点・サービスを通じて、一人一人のお母さんに寄り添い、お母さん同士が知り合う仕組み構築が行われていました。藤原さんは今後、父親のためのサポートや、会社に出向き産業助産師として男性、女性の話を聞く、育休か産後ケアを選択するか選べる仕組みづくりにも携わりたいなど、様々な施策を考えているそうです。また、今の世代が子育てに対して前向きな気持ちを持てていない現状を変えたいとも仰っていました。実際、利用者アンケートの中には、「お母さんを休むことができた」という言葉もあり、今や未来の世代が子育てに対し明るいイメージを持てるようなサポートが今社会で求められているのだなと感じました。

■NPO法人いなかみ 近藤純次さん
 香美市と移住者を繋ぐ活動をされているNPO法人いなかみでは、施設の1フロアを利用して物々交換ルームが設けられていました。物々交換は、地域の子育てのサポートにも繋がっているそうで、子ども服の出入りが最も多いそうです。間接的に人と人が助け合う仕組みは非常に魅力的ですが、物を管理するという側面から、これ以上の拡大は望んでいないとのことでした。
 また、私達のチームでは何かを教えたい人と学びたい人のマッチングに対する関心もあることから、香美市における「農業」の伝承状況についても伺いました。家庭菜園等で農業に触れたい方々は無農薬栽培を望まれるケースがほとんどであり、農家さんの栽培方法が適応しないこともあるとのことで、細かな前提条件の確認が大切であると学びました。移住に関しては、移住者が使用できる空き家が更にあればいいなと仰っていました。

■Town Hostel SOU 石井創さん
 四万十町でゲストハウスを経営され現在は青年部の副部長も務めている元地域おこし協力隊の石井さんからは、四万十町の今と未来に対するお考えを伺いました。石井さんは、四万十町の方々がまだ町を盛り上げることを諦めていない、そんなところが魅力的に感じてこの町で暮らすことを決めたそうです。ただ、石井さんのように外の世界との比較可能な方々にとって、10年20年先もこのままの姿で町を保全するのは難しいらしく、集落の移転や、温泉施設の経営など様々な問題があり、そこにどう向き合っていくかが今後の課題とのことでした。四万十町においても、移住者の家探しがネックとなっており、現在は知り合いづてに探す方法がマストであると仰っていました。

■デ・コボコ 廣瀬真也さん
 同じく元地域おこし協力隊で現在は越知町で地域プロジェクトマネージャーとして、子ども達の教育にも携われている廣瀬さんからは、その町に寄り添い生きる移住者としての生き方を教えて頂きました。移住当初から、住民同士の交流を深めようと月に一度公民会でお茶会という名の交流会を開催されているそうですが、集まる人数は減少傾向をたどり現在では2,3人となり寂し思いをされたこともあるそうです。しかし参加されない方からのコーヒーの差し入れなどを受け、様々な関わり方があることに気づかれたとのことでした。廣瀬さんは、越知町の人々を取材し「おちぼん」という情報誌を発行されています。これは越知町の人々に越知町の魅力を再発見してもらうことを目的とした取り組みとのことです。「おちぼん」発行の目的からも分かるように、廣瀬さんは地域活性化ではなく、越知町の人々が今のままで快適に暮らすサポートに従事されていました。

 今回の4施設の訪問を通じて、それぞれの地域、目的に適したマッチングのサポートが必要であるということを痛感しました。今回の学びを受け、メンバーが関心を持った問いに対するアプローチを考えていきたいです。

 

【チーム2】

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 大正八年から上町で営業を続ける宇田味噌製造所を訪ね、お話を聞きました。
 100年以上、地元の人から愛され続けている名店です。添加物の入っていない、手作りの味噌を求めて、常連のお客様が通い続けるのだとか。
 4代目の店主は、高校卒業後上京し、10数年さまざまな仕事を転々とした後、高知に戻ってきました。久々の故郷に、都会とは違う空気を感じ、とてもほっとしたといいます。その後味噌を作り始めると、その魅力にハマり、家業を本格的に引き継ぎました。今後は現在のゆったりとした仕事のペースで、地元周りの人に愛され続ける味噌を作っていきたい、と語っていました。
 インタビューを通じて、高知の人の地元への想いや、ワークライフバランスのとり方について知ることができました。

 つづいて、龍馬の生まれたまち記念館へ行きました。ここでは、土佐観光ガイドボランティア協会の方に、お話を聞きました。
 特に印象に残ったのは、「高知」の由来は河川に囲まれた地形であることを意味する「河内」であることです。
 高知や坂本龍馬の歴史、定年後のセカンドキャリアとしてのボランティアガイドを知ることができ、大変有意義な時間でした。

 また、新たな課題探索の情報集取としてLogos Park Seaside KOCHI SUSAKI(ロゴスパーク)を訪問し、SUP体験しました。若い男性スタッフ1名とシルバー雇用の2名、計3名に対応してもらいました。スタッフ同士の歳が離れていることもあり孫と祖父のような関係性だったのが印象的でした。
 前日のインタビューで、デザイナーの日野藍さんも職場の雰囲気、人との距離感が自分にあっていればストレスを抑えて楽しく働けるとおっしゃっていたので、そのこととも関連しているなと感じました。
 少し残念だったのが、岸辺にプラスチックゴミが落ちていたことです。2050年には魚よりもゴミの方が多くなると言われており、世界的にも問題になってます。スタッフにヒヤリングしたところ、ロゴスパーク内にゴミの分別ルールが決められているにも関わらず、守らない利用者がたまにいるため、困っているとのことでした。

 

【チーム3】

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 チーム3は「移住」「地域交通」「幸福」といったキーワードをもとに、これらについて現地で暮らす人に直接話を伺おうと土佐町、伊野町で調査を行いました。
 10月8日(土)の午前に高知県土佐町の「いしはらの里」を訪れ、地域への移住、公共交通、生活するなかで感じる幸せ等について、石原地区へ移住された地域協働学部OGの三谷さんにインタビュー調査を行いました。
 同日午後には伊野町で「Lisboa」というカフェを営むジョゼさん、塩谷さんのお店を訪れ、大阪から移住された経緯やきっかけ、決め手となったこと、移住前後の幸福感やライフスタイルの変化など、インタビュー調査を行いました。

 10月9日(日)には伊野町仁淀川で開催された「仁淀川国際水切り大会」にて、会場を訪れていた複数の移住者の方に移住した理由や決め手、移住後の生活、コロナ禍の影響、移住後の高知での仕事、働き方等のライフスタイルの変化などについてインタビュー調査を行いました。

 以上のインタビュー調査を通じてチーム3は、高知県における移住を通じた地域の活性化・地域で暮らす障壁を下げること・今後の人生をどのように過ごしたいのか、という問題認識の共通項を得ることができました。今後はこれらをもとに課題を設定し、解決策の提案を目指します。


【チーム4】

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 チーム4は高知県春野地区・いの地区を訪問しました。

 1日目は高知のごみ問題を解決しようと、ごみに関する現地調査と清掃活動を実施しました。初めに訪れた種崎千松公園では敷地内のごみは見当たりませんでしたが、隣接していた海岸沿いに多くのごみが落ちていました。そのためゴミ拾いを実施しつつ、キャンプ客にインタビューを行いました。(図1)次に訪問した桂浜公園、春野郷土資料館では、美しい景観が保たれており、ごみが目に付くことはありませんでした。また職員の方に協力していただいたインタビューでも、ごみ問題での悩みは少ないことが分かりました。桂浜公園については景観へのこだわりから業者に依頼にて清掃をしているというお話をいただきました。

 2日目もごみ問題を調査するためにミライエ(集落活動センター)、集落活動センター柳野(図2、図3)、いの紙の博物館を訪問しました。しかしインタビューを行うとごみ問題ではなく、若者の流出や働き手の不足に深刻な悩みを抱えていることが分かりました。また「近くに仁淀川があることから観光客は多く訪れてくれるが、それに対応できるスタッフがいないことが何よりの課題」というお話をいただきました。その後チーム内で2日間の活動について議論した結果、ごみ問題より中山間地域の働き手不足を課題として活動することになりました。

 


【チーム5】

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 チーム5では、1次産業 (農業・漁業・林業) について考え、それぞれの個性を生かして「資源循環型の食糧生産システム」の構築を目指している。我々は室戸市に焦点を絞り、まずは室戸市の農業と林業についてヒアリングすることを目的とした。今回のヒアリング場所は、あらかじめ室戸市の産業振興課の山崎課長、山本様に室戸市の「農業」と「林業」についてお話を伺える場所がないかを伺い、選定、調整していただき実現した。

 調査1日目は、 「林業」として、「芸東森林組合」の西岡組合長にお話を伺った。森林組合は、大規模に伐採していた (スギやヒノキ)。この木材は、A材という建築材等 (原木として) に用いられており、バイオマス用のチップは安価で対応することが難しい(バイオマスのチップ用途に伐採することはない)。「林業」の課題は、担い手不足が深刻であり、今後大規模に伐採するのではなく、自伐型林業への移行が進んでいる。自伐型林業は高知県では佐川町が先駆的な市町村として知られている。室戸市ではウバメガシを用いて土佐備長炭を生産している (県外からの移住先の就業先となっている)。
 次に、「農業」では、「芸東営農センター」の宮川事業所長にお話を伺った。まず西山台地の「ナスのビニールハウス」を見学し、ナスの成長、苦労、コストなどについてお話を伺った (写真)。その後、事業所に戻り室戸市・西山台地の農業生産量や就労者、そして今後の課題について伺った。一次産業すべてにおいて、担い手不足が深刻であり、「林業」や「農業」の課題の本質は共通していた。
 最後に、室戸市役所の産業振興課に戻り、本日のヒアリングの情報共有を行い、室戸市の「農業」、「林業」の課題について理解することができた。

 調査2日目は、室戸市の特徴である「海洋深層水」に着目して、海洋深層水とはどのようなものなのか。また室戸市民の方々は深層水についてどのような想いを持っているのかをインタビューした。
 まず、海洋深層水とはどのようなものなのか。を調査するために、室戸市の産業振興課の山下様にお伺いしたところ、「アクアファーム」でお話を聞くことができるということで訪問した。
 次に、室戸市の室戸岬町周辺を歩き、市民の方々に「海洋深層水とはどのような想いがあるのか」を聞き歩いた。多くの住民は、お米を炊く際に海洋深層水を使ってお米を炊いていた。しかし、高齢者の多くは、以前はアクアファームで海洋深層水を供給していたが、車が運転できなくなり、海洋深層水を気軽に利用できなくなった。そのため、現在はスーパーで海洋深層水を購入しているという。また、室戸市は、マグロの漁獲量の増加によって栄え始めたが、マグロの漁獲量が減少し、さらにキンメダイなどの室戸市特産の魚類の漁獲量が減少し、漁業が衰退した。その影響から働く場所が減少に若者が市外へ出ていく状況になった。93才のおばあちゃんによると、「室戸市は昔に戻った」という。これはマグロの漁獲量が増加する前に戻ったという意味である。この言葉をヒントにさらに室戸市について調査していく必要がある。

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