【留学体験記】生(ライブ):第2回「WHY?」(伊藤創平くん)

2014年10月3日
 

二週間ほどした時、大槻先生(高知大学総合教育センター、第一回:「地中海をみながらパニーニを食べていた」参照)と清水さん(高知大学コラボレーション・サポート・パークスタッフ)が様子を見に来てくださった。

 

それまでの僕の生活はというと、あっちへふらふらこっちへふらふらとしていた。そうするうちに、お気に入りのレストランを見つけたり、友達ができたりとイタリア生活が心地よくなってきていた。同時に「なんだこんなものか」という心も芽生え始めていた。先生方が来られて早々に、パオラ先生(サッサリ大学教授でイタリアでお世話になっている先生)とそのゼミ生も含めて、僕のプレゼンを聞いてもらう場が設けられた。

 

そこで、今まで行ってきた活動の紹介をした。

 

プレゼンの内容はあまり覚えてないが、出来はそこそこだったと思う。一安心して、その後大槻先生、清水さん、パオラ先生とでお昼を食べに行った。その時、パオラ先生に「創平、インターンの準備は進んでいる?」と聞かれた。

 

いきなりの衝撃発言だった。

 

なぜなら、インターンについては、数カ月前にパオラ先生が来日された際、少し話が出たくらいで、誰からも何も詳しい内容を聞いていなかったからだ。決まっていたのは、「どこに行く」ぐらいのことである。いつ、何をするのかについては全く触れていなかった。だから、その質問を受けて僕は混乱した。

そんな、僕を見透かすかのように、パオラ先生から重ねて「Why did you come here?」(何故、あなたはイタリアに来たの?)と聞かれた。僕も遊んでいただけではない。日本でもイタリアでも、今やれることを考えて、実行してきた。しかし、「何故ここに来たのか」と聞かれて、返す言葉が見当たらなかった。

 

なぜ、なぜ、なぜ。

帰った後も、数日間そのことだけが頭を巡っていた。そこで出た答えは、一つだった。「来ることを勧められたから」。「先生が勧めてくれたんじゃないか!!」と。

 

そして、大槻先生たちが、帰られる前日にもう一度、会が持たれた。そこで、今まで考えたことを話そうと思った。そして、なぜ情報や指示が無いのか。無かったら用意できないではないかと反論しようと思っていた。

 

しかし、面と向かって「Why did you come here?」と聞かれた時、やはり返す言葉がなかった。

 

帰り道、僕は強く後悔していた。

 

さっき、考えていたことを伝えられなかったからではなく、今までの自分を強く悔やんだ。結局、人から言われたことを自分はやってきただけじゃないのか。人がやっているから、人が言うから自分は決めるのか。そこに、自分の意志は無いのかと。その瞬間ハッとさせられた。今までの自分は環境に甘えていたのだ。もし、自分で決めてここに来たのなら、インターン先を調べて、自分で行く日程を決めて自分で進めていくのは当然だろう。それに、イタリアに来て感じたこともリンクした。自分の力だけでは、どこにも行けないし、他人とも話せない、満足に食べるものも手に入らないのだ。どれだけ、環境に依存して生きているのかを思い知らされ、自分一人で何とか出来るといった、プライドや自信は根っこから消えてしまった。

 

その日の帰り道に感じた、胸が焼けているような感覚は、今でもはっきり覚えている。

 

しかし、時間は待ってはくれない。次の日、先生たちは帰国し、また一人の生活が始まった。そして、右も左もわからないままインターンが始まる。

 

教育学部 4年 伊藤創平

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