【留学体験記】グラッツェミーレ!イタリア 第4章 料理を通じて市場を考える(その1)

2012年11月1日
僕の研究テーマはローカル・マーケットである。
 
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何で市場が好きなのかって?

その答えは、正直「なんとなく」なのかもしれない。

 

僕は、大学1年生のときに高知の日曜市を元気にするために「Sunday Market Supporters」という団体を仲間たちと立ち上げた。最初は単位の出る集中講義「地域協働入門」に参加したのがきっかけだった。そのきっかけをくれたのは、恩師の石筒先生である。日曜市、そして団体の仲間たちとの出会いが、順風満帆だった僕の人生の歯車を少しだけ狂わしてくれたのだ。

 

今回は少し僕の研究についても書いてみようと思う。

 

僕は、日曜市を初めて訪れた時にとても強い衝撃を受けた。

何よりも驚かされたことは、出店者さんの個性や言動であった。

「日曜市での商売らぁ赤字みたいなもんよえ。」

「私は50 年近く日曜市にお世話になってきたから死ぬまでここにいたい。」

「買いたくない人に売らなくていいき。」

1年生の僕にとって、理解のできない言葉がマシンガンのように打ちこまれてきたのだ。

 

僕は4年間をかけて、一生懸命に何で日曜市が成り立っているんだろうということについて考えてみた。この「なんで?」という単純な疑問が、僕をローカル・マーケットの研究をするにいたらせてくれたきっかけなのである。

これだけではカッコつけすぎだ。

僕がマーケットの研究を好きな理由として、何より市場が好きなことが挙げられる。

海外に行けば、必ずローカル・マーケットとスーパー・マーケットに行くというのが僕の旅の楽しみである。地域の食や文化、様々なものが市場で垣間見ることが出来る。

国内旅行でも、願わくはローカル・マーケットに行っておいしいものでも食べながら、市場のおばちゃんと話をしたい。でも、日本にはあまり市場の文化は残っていないし、あっても観光客向けの市場が多い。僕は、観光客向けの市場は好きではない。とても残念である。

 

さて、話をイタリアに戻そう。

イタリアにおけるローカル・マーケットとはどういうものなのか。それを勉強してくることがこの留学のおおきな目的のひとつであった。その成果をまとめ、ある国際学会に向けての論文作成というが、僕の唯一にして最大のミッションだったのだ。

というか、そのはずだった。

 

僕の滞在していた街、アルゲーロの中心部には野菜のマーケットと肉・魚のマーケットのふたつが存在しており、かなり多くの人がその市場を利用していた。

すぐ近くにはスーパー・マーケットがあってそれらが共存していた。僕にとってはその光景が不思議であった。様々な国で、スーパーや量販店の登場が、市場の減少に向かわせる原因とされていたからである。

イタリアでは、日本より10年以上前からグリーンツーリズム(グリーンツーリズモ)という言葉が存在していたようであるし、農業や農村については日本より進んでいるところがたくさん存在している。僕には、学びたいことが多くあった。

何人かの農家さんに泊まり込みで働かせてもらえるよう交渉し、生活を見てこようと思ったのだが、「イタリア語は?」、「何の野菜を育てられる?」、「牛の出産はできる?」というような、質問を突きつけられあえなく挫折。

結果的には、ワインヤードでインターンシップを行うことになった。

詳しくは機会があれば書いてみようと思う。

 

僕は石筒先生から、イタリアでマーケットに通って、野菜や肉を買い、料理方法も出店者から聞いて自炊してみろというミッション・インポッシブルを仰せつかっていた。

これもすべては僕の力になる…はずだった。

初日に豚丼を作ろうとして試してみた。

結果は…、キッチンを共有していたタイ人の留学生であるシアニーさんに、「犬のえさ?うーん、これは犬でも食べないよ。」という評価を頂戴してしまったのである。

あまりの悲惨な状況のため、しばらくはシアニーさんに、僕の朝ごはんを作ってもらうという生活を送っていた。

僕にとっては言葉よりも料理の方がずっと大きな壁であった。

そんな、始めての経験を積みながら、マーケットが日常生活の中にある生活をイタリアで送り始めていた。

 

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 (第5章へ続く)

                           人文学部4年 浅川直也

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