◆佐野有司海洋コア総合研究センター長ら国際共同研究グループの研究成果が、「Communications Earth & Environment」に掲載されました

2023年1月5日

 高知大学の佐野有司海洋コア総合研究センター長と富山大学学術研究部理学系自然環境科学科の鹿児島渉悟特命助教を責任著者とする国際共同研究グループの研究成果が、英国のオープンアクセス科学誌「Communications Earth & Environment」に2023年1月4日付けで掲載されました。

 本研究グループでは、九州中央部に存在する典型的なカルデラ火山の阿蘇山と複合的な成層火山の雲仙岳を対象にして、両火山周囲の温泉・鉱泉・地下水のヘリウム同位体比(※1)の調査を行いました。すると、両火山周囲の温泉では、火口に近い場所ではマグマの影響で同位体比は高く、遠ざかるにつれて地殻の影響で低下する傾向が見つかりました。また、この結果を水理学モデル(※2)で解析すると、阿蘇山のマグマは雲仙岳よりも古いことが分かりました。これは、地震波トモグラフィーの解析により、上部マントルからの新しいマグマの供給がないことと整合的です。また、火山から少し離れた温泉・鉱泉への影響は阿蘇山が雲仙岳より大きいことが分かりました。これはカルデラ火山がより発達した大きな温泉・熱水系を持つことを示します。

 このように本研究は、カルデラ火山と成層火山の違いをヘリウム同位体により世界で初めて示しました。今後のデータの蓄積により、将来どの火山が破局的なカルデラ噴火を起こすか推定できるかもしれません。

 

論文タイトル:Older magma at Aso caldera than at Unzen stratovolcano in south west Japan as recorded through helium isotopes

著者:Yuji Sano, Takanori Kagoshima, Maoliang Zhang, Naoto Takahata, Tetsuji Onoue, Tomo Shibata, Yoshiro Nishio, Ai-Ti Chen, Hyunwoo Lee, Tobias P. Fischer and Dapeng Zhao

雑誌名:Communications Earth & Environment (2023)

【高知大学・富山大学】世界初、カルデラ火山と成層火山の違いを決定.pdf(401KB)

 

※1 ヘリウムは希ガス元素の仲間で化学反応性が低く、安定な同位体が2つ存在する。その比(3He/4He)は地球深部のマントルでは高く、地殻では低いとされており、マントル物質の敏感なトレーサーとして知られている。

※2 地下水は水頭圧の差によりダルシーの法則に従って流れるが、その際に帯水層を構成する岩石や鉱物と水の化学的交換反応が生じる。本モデルでは帯水層中のウラン・トリウムの放射壊変に伴うヘリウム-4(4He) の生成を考慮した。

●このページについてのお問合せは...

お問合せフォームへ

掲載されている内容について、不明点や疑問に感じたことなどございましたらお気軽にお問合せください。

インフォメーション

インフォメーション
AED設置場所