◆令和元年度高知信用金庫・高知安心友の会学術賞授与式 及び受賞講演会を開催しました

2020年8月3日

 高知大学医学部では、高知信用金庫及び高知安心友の会から医学研究に対して助成をいただいています。この助成金を基金として、高知大学医学部(高知医科大学時代を含む。)において基礎・臨床の各分野で学術研究上顕著な成果をあげた研究者に対し、学術賞を授与しています。

 受賞対象者は、高知大学医学部の准教授、講師、助教、大学院生、医員及び外国人研究者となっており、本年度はこれらの対象者から8人の応募があり、選考の結果、次の2名に学術賞を授与することが決定され、授与式及び受賞講演会を令和2年7月21日(火)に医学部臨床講義棟にて執り行いました。

微生物学 講師 樋口 智紀 感染・炎症関連悪性リンパ腫の腫瘍免疫回避機構におけるケモカイン系の役割の解明
脳神経外科 助教 八幡 俊男 膠芽腫幹細胞に特異的な標的分子の同定とその機能の解析

令和元年度高知信用金庫・高知安心友の会学術賞受賞者

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左から樋口講師、菅沼医学部長              左から八幡助教、菅沼医学部長

○微生物学の樋口講師が受賞された研究の概要

悪性リンパ腫はしばしばウイルス感染による慢性炎症を基盤に発症する。Epstein–Barrウイルス(EBV)の慢性感染を伴うびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL-CI)は明確な免疫不全状態にない患者にも発症する。したがって、DLBCL-CIの発症要因には腫瘍微小環境での局所免疫抑制機構の存在が示唆されるが、その詳細は明らかにされていない。
 本研究では、DLBCL-CIの代表である膿胸関連リンパ腫(PAL)を対象に、腫瘍免疫回避機構におけるケモカイン系の役割を明らかにすることを目的にし、以下の結果を得た。
 1)PAL細胞株で、CCR4を受容体とするケモカインCCL17とCCL22が強く発現・分泌していた。
 2)PAL細胞培養上清やマウス腹腔内に接種されたPAL細胞は、CCR4陽性制御性T(Treg)細胞を誘引し、その細胞誘引はCCR4阻害薬によって有意に抑制された。
 3)PAL病変組織において、リンパ腫細胞でのCCL17とCCL22の高発現と腫瘍部位へのCCR4陽性Treg細胞浸潤が確認された。
 本研究は、PALでのCCL17とCCL22の発現・分泌が腫瘍微小環境へのCCR4陽性Treg細胞を誘引し、腫瘍免疫回避機構の一端を担うことを解明したものである。DLBCL-CIに対するCCR4関連分子を標的とした新規治療指針のための基盤研究につながることが期待できる。

○脳神経外科の八幡助教が受賞された研究の概要

 膠芽腫には、造腫瘍性や浸潤能が高く、放射線治療や化学療法への感受性が低い幹細胞が含まれ、この腫瘍の治療抵抗性や再発の原因の一つとして考えられている。これらの膠芽腫幹細胞の性質が故にこの細胞を排除する治療法の開発には大きな期待が寄せられている。しかしながら、膠芽腫幹細胞に特異的な分子を同定した報告は限られている。
 本研究では、膠芽腫幹細胞において特異的に発現し、腫瘍の形質に関与する治療標的となり得る分子の同定を目指した。膠芽腫幹細胞において、多剤耐性遺伝子、がん精巣抗原遺伝子、転移浸潤関連遺伝子が高発現していることを見出した。転移浸潤関連遺伝子のうち、CD146/MCAMは、膠芽腫幹細胞において細胞周期の制御に関わっていることを明らかにした。
 これらの結果は、膠芽腫幹細胞を標的とした膠芽腫に対する新たな治療法の開発に有用であると考えられる。

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