◆海洋コア国際研究所の氏家由利香教授らの国際共同研究チームの研究成果が、「Environmental Pollution」誌に掲載されました

2023年5月16日

 海洋コア国際研究所の氏家由利香教授ら国際共同研究チームが、人為汚染物質である人工ナノ粒子を環境から分離する新たな生物浄化作用を発見し、その研究成果が「Environmental Pollution」誌に2023年5月16日付けで掲載されました。

 人工ナノ粒子は、日用品から家庭家電、工業製品など非常に幅広く用いられています。優れた物理化学的特性を持つことから人間社会に多大な恩恵をもたらす一方で、人工ナノ粒子廃棄物は土壌や海洋に排出され、新規の環境汚染物質としてその影響が国際的に注視されています。中でも酸化チタンナノ粒子は世界2位の生産量があり、一部の沿岸海域ではすでに重篤な汚染をもたらしていると推定されています。特に、近年は日焼け止めの成分としても多用され、環境への流出量は今後、増加の一途を辿ると考えられています。しかし、こうしたナノ粒子は極小サイズであることから、環境の中からの回収は容易ではありませんでした。

 本研究では、海洋コア国際研究所の氏家由利香教授らが単細胞真核生物である有孔虫を用いて、酸化チタンナノ粒子の毒性作用に関する代謝過程を明らかにしました。さらにその過程で有孔虫が酸化チタンナノ粒子による毒性を解毒し、環境から分離するユニークな能力を持つことも新たに発見しました。

 本研究で得られた知見や手法は、今後ナノプラスチックや他の人工ナノ粒子による細胞毒性を解明する基盤となります。また、有孔虫が持つ生物浄化作用は、人工ナノ粒子の回収といった環境イノベーションへの展開が期待されます。

 なお、本研究は高知大学海洋コア国際研究所、国立研究開発法人海洋研究開発機構、イタリア・ウルビノ大学などを中心とする国際共同研究チームによって達成されました。詳細は以下のリンクをご覧ください。

 

 タイトル:Fascinating strategies of marine benthic organisms to cope with emerging pollutant: titanium dioxide nanoparticle

 著者:石谷佳之1、Caterina Ciacci2、氏家由利香3、多米晃裕4、Mattia Tiboni2、谷藤吾郎5、稲垣祐司6、Fabrizio Frontalini2

    1. 海洋研究開発機構、2. ウルビノ大学、3. 高知大学海洋コア国際研究所、4. マリンワークジャパン、5. 国立科学博物館、6. 筑波大学計算科学研究センター

 DOI: 10.1016/j.envpol.2023.121538

 プレスリリース「人為汚染物質である人工ナノ粒子を環境から分離する 新たな生物浄化作用の発見 」.pdf(1MB)

 

1.png

酸化チタンナノ粒子を含む培地中で長期培養を行った有孔虫。細胞外にチタンを内包した粘液(矢印部)を排出していることがわかった。

●このページについてのお問合せは...

お問合せフォームへ

掲載されている内容について、不明点や疑問に感じたことなどございましたらお気軽にお問合せください。

インフォメーション

インフォメーション
AED設置場所